新作組踊『聞得大君誕生』再演制作発表記者会見
 
 2月12日(水)、国立劇場おきなわ5月企画公演の制作発表記者会見が行われ、演出・主演の坂東玉三郎、作者の大城立裕らが出席しました.
 
 昨年3月に初演し話題となった新作組踊『聞得大君誕生(ちふぃじんたんじょう)』を、前回に引き続き歌舞伎女方人間国宝の坂東玉三郎が主演、また今回は、玉三郎と当劇場芸術監督嘉数道彦との共同演出により制作いたします。玉三郎らが公演に向ける意気込みを語りました。
 
 
【左から、玉城盛義、川満香多、嘉数道彦、坂東玉三郎、瑞慶覧長行(当劇場常務理事)、大城立裕、織田紘二】
 
 
坂東玉三郎 (演出・主演)
 
 初演時には、大城先生に脚本を書いていただいた時に、これなら私がこれまでやってきた女方の心を使って演じられるかもしれないとの喜び、想いがあり、また、沖縄の皆さんとご一緒することにより、新しい雰囲気が生まれ、多くの皆様に目を向けていただき、また新しく組踊というものが将来に向かっていければ、という思いで懸命につとめました。昨年は、嘉数(道彦)さんとは共演者として一緒に演じさせていただきましたけれども、昨年、この若さでの芸術監督を就任され、活動なさっている。そのことの将来性、前向きな体制を、私は大変嬉しく思っておりましたところ、こうして、再演のお話をいただいたのです。
 
 再演とはいえ、去年よりはいくらか馴れている舞台をつとめられるという思いもありますが、大城先生もこうしていつも意欲的に挑んでくださいますし、前回ご一緒した舞台の共演者の方々とも、忌憚なく話し合える仲になったのが去年よりも今年ということだと思います。そしてなによりも大城先生が、この度の再演が名誉であるといってくださったことを喜びに思い、それに応えていきたいと思います。皆様どうぞ劇場にいらしていただいて、お楽しみいただきますようにお願い申しあげます。
 
 もうひとつは、(通常は)組踊の大きなものの前に舞踊が組まれるものですが、去年嘉数さんと、これを一つの流れとして見られるものにするにはどうしたらいいだろうという話をしておりまして、今までの古典舞踊などを組み替えて一つの物語になるように、ということで、『聞得大君誕生』の後に『蓬萊島(ほうらいぬしま)』という題名で楽しく見ていただける舞踊に仕立てた次第です。お楽しみいただけたら幸いでございます。
 
 
 
 
大城立裕 (作者) 
 再演にかける思いは初演への思いから始まります。新作を22番書きあげたところで、坂東玉三郎さんに主演していただくための新作を書く、という物書きとしてこれ以上の光栄はない機会をいただいたことを有難く思っています。それが再演にまでこぎ着けたということですが、他の作品でもそのようなことは多くはなく、しかも、今回もまた、玉三郎さんという名優に演じていただけるということで、これ以上の名誉なことはございません。
  再演にあたって、また新しく書き加えた部分がございます。それも玉三郎さんの芸術家としての情熱があってこそであり、またご期待いただきたい。この『聞得大君誕生』が、私の最高作だと自負しています。
 
 
嘉数道彦 (演出)
 初演時にいただいた多くのお客様からの再演を望むお声が劇場によせられての今回の再演です。加えて、前回は、共演者にとっても玉三郎さんと一緒に舞台を創っていく取り組みに、学ぶことが非常に多くありました。今回は、それを更に練り上げての再演ということで、非常に名誉な嬉しい機会を与えられたと感謝しております。台本は、前回とは変わった部分もありますが、それをどう創りあげていくか、玉三郎さんの演出家としての大きな視点、・感性をうけて、それを組踊ではどのように表現するのか、他の出演者やスタッフ陣と力を合わせて,組踊とは何かを掘り下げつつも、新たな作品の展開にむけて取り組んでいきたいと思っております。
 今回、新たに発表する創作舞踊『蓬萊島』についても玉三郎さんと沖縄の出演者陣が話し合い、琉球舞踊の魅力をより多くの方に伝えていくにはどうしたらいいか相談し、共同作業として一から創りあげてきました。琉球の古典舞踊を大切にしつつ、その上にその魅力がより伝わるようにとの構成・演出のもとに成り立った新たな作品となります。
 6月には、京都の四條南座でも公演いたします。組踊の演者にとっても歌舞伎を上演する劇場で1週間組踊を演じるということは意義深い経験になると思います。実演家達と心をひとつにして、玉三郎さんの力をたくさんお借りして、初演より磨きのかかった舞台として登場できるように稽古を積んでいきたいと思っております。
 
 
 
川満香多 (組踊立方/伊敷里之子役)
 初演を振り返りますと、ただただ坂東玉三郎さんと共演できるということで緊張・感動・興奮でした。玉三郎さんと共演することで僕の出身の宮古島、普段芸能の情報がなかなか少ない島なのですが、前回の共演がきっかけで宮古島全体が組踊って何だろうと、組踊を知ってもらうことが出来たと思っております。再演ができるということで初演以上に頑張り、初演以上によりよいもの、よりよい役にしていきたいとおもいます。
 
 玉城盛義 (組踊立方/尚真王役)
 初演からもう1年経とうとしています。当時は無我夢中であっというまに東京・沖縄公演が終わったという感じです。そして今回再演、ということで大変嬉しく思っています。今回は、演出に嘉数道彦さんが加わって、また新たな演目も加わりました。昨日、『蓬莱島』のお稽古参加させていただきましたが、すごくいい雰囲気のなかで稽古が進んでおります。5月の本番には皆様を沸かせるような、今までにない舞台をお見せできることだろうと思います。前回を踏まえて、しっかり兄、国王として演じられるよう、お稽古に励みたいと思います。
 
 
 
 
織田紘二(総監修・製作総指揮) 
 昨年の初演では、こちらでも東京でもチケットが取れなかった方が多く、観客の後押しがあって再演となった次第です。今回も非常に常に熱心に,熱っぽい稽古を行っておりまして、実感としてよい初日が迎えられるのではないかと感じております。今回は、沖縄公演に続いて、6月に京都四條南座での公演もございますが、県外の歌舞伎の劇場で1週間連続で上演できることは素晴らしいことであり、それだけに出演者には、ぜひとも成功させてもらいたいし、琉球芸能の本当のプロになってほしい。組踊のあらたな出発のチャンスにして欲しいと思います。
 『蓬萊島』では、楽しい、美しい、ファンタスティックな玉三郎さん制作の琉球舞踊ができるだろうと実感しております。沖縄の皆様にも楽しんでいただけるよう、そして京都に送り出していただけるよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
 
 新たな布陣で更に練り上げられ帰ってきた『聞得大君誕生』、そして新たに玉三郎の感性で創りあげられる『蓬萊島』、どちらも期待が高まります。
 5月企画公演新作組踊『聞得大君誕生』どうぞご期待ください。